先日の夜、寝ているときに両足がつりました。約1時間足の痛みとつりが続いて、両方の手にしびれも感じました。そして少しの間ガクガクと全身の震えも起こりました。
1年ほど前にも足のつりを経験し、医院を受診しましたが特別な治療もなく異常はないと言われたことがあります。
原因として考えられることは、その日の2時間ほど高いハイヒールを履いてダンスを踊りました。そのせいかとも思いますが、1時間も続いたこと、手のしびれ、震えを感じたことが気になります。
ちなみに毎年の健康診断では何の異常もなく、ときどき登山を楽しんでおります。
なにか隠された病気があるのか、それともよくある足のつりと思ってよろしいのでしょうか?
(50歳代 女性)
足がつるというのは、こむら返りのことだと思いますので、こむら返りについてご説明します。
こむら返りは、自分の意志とは関係なしに起こるふくらはぎの筋肉の痙攣で、強い痛みを伴い、足は尖足位という爪先立ちの形をとります。
人間のからだは筋肉の収縮と弛緩を調節することによって、バランスのとれた動きをします。この調節の仕組みは、脳や脊髄などの中枢から信号が神経を通って筋肉に送られ筋肉の収縮が起こり、次に筋肉や腱のセンサーから逆方向に信号が中枢に送られ、どれくらい収縮するか弛緩するかが決められています。こむら返りは、この仕組みのなかで起こる異常収縮です。
筋肉の異常収縮が起こる理由は次の2つが考えられています。ひとつは神経や筋肉が刺激を受けやすい状態になっていることです。スポーツなどで多量の汗をかいたとき、妊娠中のカルシウム不足、下痢による脱水、人工透析により電解質バランスが崩れたときなどに神経や筋肉が興奮しやすくなります。もうひとつは、筋肉や腱のセンサーがうまく働かない場合で、寝ているときや水泳のときに起こるこむら返りは、この理由が考えられます。寝ていると下肢の温度が低下しセンサーの感度が鈍くなります。またふとんの重みや重力のために足は尖足位になっています。尖足位で膝や足を伸ばし、ふくらはぎの筋肉が収縮しても収縮の程度が少ないためにセンサーがうまく働かず、尖足位が強調されこむら返りが起こります。
こむら返りの多くは健常人にみられる一過性のもので、治療を必要とすることはまれです。
さて、ご質問の内容から判断すると、ご自分で分析されているように、ハイヒールを履いて2時間踊ったことが引き金になっていると思われます。
次にからだの振るえと両手のしびれについてですが、おそらくこむら返りの痛みと不安感により、呼吸が多く深くなり、過換気症候群が起こったと思われます。
過換気症候群は、呼吸の回数が多くなることによって、過度の酸素が体内に入り頭痛や吐き気、口の周りや手足のしびれ、ひどいときには全身の痺れや痙攣を起こしたりする病態です。
こむら返りの予防は、発汗に対する水分と電解質の補給、バランスの良い食生活、体調を管理し過労や睡眠不足に気をつけるなどです。また寝ていて膝や足を伸ばすときには、踵を突き出すようにして尖足位にならないようにします。こむら返りに対しては、芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)という漢方薬が非常によく効きます。
今後も、こむら返りを繰り返すようでしたら、医療機関で検査を受けられることをお勧めします。
(2004.12.02)