奥村 博
膝に水がたまり、はれあがり、痛みのため膝が曲がりにくくなり来院され、医者が「水を抜きましょう」というと、「癖になりませんか?」と質問される患者さんをよく見かけます。膝の水(関節液)は抜くから貯まるのではありません。関節液は関節の滑りを良くするとともに関節軟骨に栄養を与える液体で、正常では関節軟骨表面を潤すだけの少量ですが、関節の中に炎症が起きると過剰に産出される結果、関節水腫(水がたまった状態)となります。ちょうど、鼻炎で鼻水がたくさん出てくるのと似ています。鼻水をかんだから出てくるのではないように、膝の水を抜いたからたまってくるものでもないのです。水がたまらないようにするには、その原因を明らかにして治療することが大切なのです。
膝に水がたまる代表的疾患は変形性膝関節症、慢性関節リウマチ、痛風、偽痛風、外傷性膝関節炎などがあります。整形外科医の診察をうけ、レントゲン検査や関節液の検査などで、ほぼ診断が可能となります。関節液の検査というのは、膝から直接注射器を使って水を抜く検査のことをいいます。これを関節穿刺と呼んでいます。
関節穿刺をすることによって、関節水腫に伴う疼痛や可動域制限(膝がよく曲がらない状態)をとるだけでなく、穿刺した関節液の性状を検査することによって関節水腫の原因を診断するのに役立ちます。時には、たまっているのは水ではなくて血液であつたり、膿であったりすることもあります。血液や膿の場合、前に列挙した疾患以外の病気が隠れていることもあり、MRI(磁石とコンピューターで断層写真をとる検査:無痛です)や関節鏡(膝の中に小さなカメラを入れて見る検査:麻酔が必要です)といった検査が必要になります。このように、症状の改善と正しい診断のため、関節穿刺は非常に重要な検査の1つであるといえます。
(2003.01.16)