金子 真奈美
(東区 かねこ耳鼻科)
「うちの子供、大人なみの大鼾なんです」とよく言われますが、鼾は大人だけでしょうか? 実は子供は構造上とても鼾をかきやすいのです。
鼾とは主に、上気道(鼻からのど)のどこかが狭くて発声する音です。では子供の上気道はどうでしょうか。子供は免疫力が低いため、ウィルスや細菌から体を守る免疫装置が発達しています。口を開けると左右に半球状のものがありますがこれを扁桃といいます。さらにこの扁桃と鼻の間には(見ることはできませんが)アデノイドという組織が出っ張っています。これらは3~4歳頃より発達し始め、6~8歳で最も大きくなり、その後縮小していきます。どちらも免疫を担う大切な装置ですが、このために子供の上気道は大人より狭くなっているのです。感冒時はこれらがいつもより腫れますから、一層鼾をかきやすくなります。
これらの組織がとても大きいと(扁桃肥大、アデノイド増殖症といいます)鼾だけでなく、ついに上気道が閉塞し息が止まる場合があります。「睡眠時無呼吸」という状態です。鼾の途中で鼾が止まって静かになったかと思うと大きな鼾をして再び鼾が始まります。こんな鼾を見たら要注意です。重症化したものを「睡眠時無呼吸症候群」と呼び、夜間十分な睡眠がとれないため、日中傾眠、落ち着きがない、夜尿、夜驚といった症状が見られます。さらに口呼吸による歯列異常や胸郭変形、中耳炎の原因にもなります。重症の場合は扁桃やアデノイドを摘出する手術が勧められます。
最近では肥満のため上気道に脂肪がついて鼾をかく子供も増えています。また鼻が悪いのも鼾の原因となります。「大人なみの大鼾」をいつもかく場合は、一度お近くの耳鼻咽喉科にご相談下さい。
(2007.06.12)