植木 秀任
(中央区 植木外科医院)
近年爆発的に普及を見せているのが温水洗浄付き便座ーウォシュレットです。(ちなみに「ウォシュレット」という名称はTOTOの登録商標です。)これだけでなく暖房便座機能やふたの自動開閉、さらには脱臭、抗菌、防汚機能の搭載、また省エネにも配慮しての節電機能など、ますます多機能化が進んでいます。便器の多機能化というのは清潔好きな日本独特のものであり、世界的にはこのような便座はまだ普及していないのだそうで、日本を訪れた外国人が良い思い出のひとつに揚げることもあるようです。(歌手のマドンナが2005年に来日した時、彼女は「日本の暖かい便座が懐かしかった」とコメントしています。)
しかしながらこの頃、わたくしたち肛門科へ来院される患者さんの中には清潔好きで温水便座・ウォシュレットを使っているのに痔が良くならないと思って来られる方が増えているように思います。そんな方々を診察しますと、みなさん肛門のまわりの皮膚が乾燥、肥厚し、ただれています。お話を聞きますと、排便後きれいに洗わないと気がすまない、気持ち悪いなどの理由でウォシュレットを頻繁に使ったり、水勢や水温を過剰に上げて使用している方や、肛門の不快感やかゆみがあったので、お尻が不潔になっているせいだと思い、ウォシュレットを前より長めに使ったり、さらにペーパーでごしごしとこすっていたら症状が強くなってしまった、という方が多いのです。どうもそれは逆効果のようです。肛門周囲は敏感な所なので、ウォシュレットを使い過ぎるとかえって皮膚炎を起こしたり浣腸作用を起こして、不快感や残便感が強くなったりします。これが「ウォシュレット症候群」と呼ばれている現象です。
夏は暑さで蒸れてお尻も気になる時期です。でも清潔好きのあなた、なかなか症状が取れない時は「ウォシュレット症候群」かも知れませんよ。肛門科での診察をお勧めします。
(2008.8.12)
(2008.08.08)