信田 慶太
2022年11月8日、新潟市西区山田に「くろさき心のクリニック」を開院させていただきました。
私は燕市の出身で、金沢大学を卒業後、2001年に新潟大学精神医学教室に入局いたしました。大学病院および県内の関連病院に勤務した後、2017年3月で医局を離れたのですが、当時の私は開業する気などなく、就職した県内の民間精神科病院に骨を埋めることになるだろうと思っておりました。しかしそこで思わぬ事態に遭遇してしまいます。詳しい内容は割愛しますが、就職後1年数カ月で院長の交代、その後には経営母体も変わってしまい、職場の状況は当初私が思い描いていたものとはかけ離れたものになってしまいました。自分の精神科医人生このままここで終わっていいのだろうかと悶々としながら過ごしていた頃、しばた心と体クリニックからお声かけいただき、心機一転クリニックでの診療を行うこととなりました。
思いもかけずクリニック診療に携わることになったわけですが、実際にやってみると病院時代とは患者層の違いを実感することになります。統合失調症が少ない事、適応障害が多い事、そして何より完治して終診となるケースが多いという事を目の当たりにしました。そのような環境で働くうちにクリニック診療の魅力を感じ始め、やがて自分のクリニックでやってみたいと思うようになりました。
それから約2年、縁あって黒埼での開業となりました。「縁あって」というのには一応私なりの理由があります。燕市出身の私は、大学を卒業して新潟県に戻って来てからの二十余年、新幹線の下の農道を通って燕の実家と新潟市を行き来しておりました。燕から新潟に向かった場合、農道を抜けるとまもなく黒埼地域があります(正確にどこからを黒埼と呼ぶのか分かりませんが)。この辺りから新潟市中心部に向かうまでに色々な行き方があり、その時の気分などで適当なルートを選ぶのですが、それらを教えてくれたのは亡くなった父でした。黒埼周辺を車で走っていると、今でも当時の父を思い出すことがあります。そんな黒埼にある土地が、開業地候補として私に紹介されたのです。亡き父が導いてくれているように感じ、この地での開業を決断したことを覚えています。
さて、そのような私個人の黒埼への思い入れはともかくとして、「ふるさと村むかい」という分かりやすい立地は、より多くの人に知っていただく上で非常に良かったように思います。おかげさまで黒埼周辺だけでなく、北は村上市、南は長岡市からもご来院いただいております。遠路はるばるお越しいただいている方々(もちろん近隣からご来院いただいている方もですが)のご期待を裏切ることのないよう、精進していかなければならないと思っております。
近年、精神疾患は多くの人に認知されつつあるものの、疾患に対する誤解、精神科医療への不適切な期待、向精神薬への過度な恐れなどが蔓延っているのも事実です。縁あってクリニックを開院させていただいた黒埼の地で、一人でも多くの方にご自分の疾患を正しく理解してもらい、納得した上で治療を受け、安心してそれを継続していただける場を提供できるよう力を尽くしていく所存です。
どうぞよろしくお願い申し上げます。