白柏 麻子
情報化社会と言われる昨今、情報の多くが目という感覚器を介して得られるものであることから、目の重要性を感じない人はいないと思います。さて、この大事な目を一生涯守っていくために何をしたら良いのでしょうか。まず、それは病気の予防と言えるでしょう。
平成18年に報告された視覚障害の主原因の調査によれば、第1位が緑内障、第2位が糖尿病網膜症、第3位が網膜色素変性症、第4位が加齢黄斑変性を主とする黄斑変性疾患です。このうち、緑内障と糖尿病網膜症に関しては、その治療法がある程度確立しているので、早期発見、早期治療が奏功することが考えられます。
緑内障は、日本緑内障学会による疫学調査によれば、有病率5%とされ、20人に1人の割合で存在する決して珍しくない病気です。新しい緑内障治療薬(目薬)の開発により、早期発見例では手術などをしなくても、一生涯良好な視力を維持できる可能性が高い時代となりました。早期発見するためには、自覚症状のない時期における定期検査が重要です。日本人では、正常眼圧緑内障の有病率が高いので、眼圧検査のみならず、眼底検査も確実に行い、視神経の状態を把握することが大切です。
また、糖尿病の有病率も増加の一途を辿っており、平成18年に実施された厚生労働省の統計では糖尿病が強く疑われる人は820万人、予備軍を含めると1,870万人と報告されています。糖尿病自体の早期発見、早期治療をすることで、網膜症への進展は阻止できるでしょうし、たとえ網膜症になったとしても、適切な時期にレーザー治療などが施されることで視力を維持できる例が多いのです。
さて、私たち眼科医は、前述したような疾患の早期発見に努めると共に、常に適切な医療が行えるように努力しています。また、平成21年4月より、眼科救急体制が在宅当番制からセンター化へ変更となり、各眼科医が旧市民病院跡の急患診療センターへ出向いて患者さんを診察することになります。休日の急患さんをいつも同じ場所で受け入れられることが、地域の方々の安心につながれば嬉しいと思います。
(2009.03.24)