椎名 真
レントゲン博士がX線を発見してから、100年以上がたちました。「放射線」と聞くとなにか恐ろしいものという印象を受ける方もいるかもしれません。しかしこの間、放射線の利用によって医学は大きな発展を遂げてきました。
さて、「放射線科医」とは何をする人でしょう。放射線科医は、放射線を使って「がん」などの病気をなおす「放射線治療医」と呼ばれる人と、X線(レントゲン)写真などを見て病気をみつける「放射線診断医」という人に分かれます。
がんの治療には、手術、お薬(抗がん剤)、そして放射線治療があります。がんの種類やすすみ具合(進行度)によってこれらの方法が単独で、または組み合わせて用いられるわけです。このうち放射線治療は、患者さんの外見やからだの機能を損なわないという特徴を持っています。放射線治療医は、ほかの科の医師と同じように患者さんを診察し、放射線治療装置を用いて治療を行います。放射線治療装置にはいろいろなものがありますが、その特徴をよく知って、がんの部分に放射線を集中して照射し、なるべく周囲の正常な組織を傷つけないで「がん」だけをやっつける、というのが放射線治療医の目標となります。
それでは放射診断科医とは何をする人でしょうか。放射線診断医は、撮影されたX線写真をよくみて「病気があるかないか、あるとすればどんな病気か」を診断するのが仕事です。これを「読影(どくえい)」といいます。最近では、いろいろなレントゲン写真の読影(CTもX線写真の一種です)だけでなく、腹部超音波検査(エコー)や磁気共鳴検査(MRI)も放射線診断医の主要な仕事となっており、その意味から「画像診断医」と呼ばれることもあります。
住民健診では、胸部、胃、乳房など、X線検査が欠かせない手段となっています。これらの検査は専門の医師が読影することになりますが、放射線診断医の多くが住民健診のX線写真の読影に協力し、検診症例の検討会を定期的に行うなど常にその精度向上に努力しています。
放射線治療装置(ライナック)
住民検診のX線写真で発見された乳がん(矢印)
(2007.03.29)